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燃え尽き脳神経内科医の備忘録・学習記録

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カルシニューリン阻害薬による振戦|神経内科の論文学習

Posted on 2019年7月23日 By 雪むかえ カルシニューリン阻害薬による振戦|神経内科の論文学習 へのコメントはまだありません
医学, 学習, 脳神経内科, 論文

Tremor induced by Calcineurin inhibitor immunosuppression: a single-centre observational study in kidney transplanted patients

 (Journal of Neurology)

J Neurol. 2018 Jul;265(7):1676-1683
DOI:https://doi.org/10.1007/s00415-018-8904-x

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

カルシニューリン阻害薬いよる振戦:単一施設での腎移植後症例の検討.

 

 自分自身は移植後の症例は担当することはほとんどありませんが,自己免疫疾患でカルシニューリン系の薬を使用し,振戦を生じた症例は経験があります.薬剤性振戦について詳しく調べたことがなかったため,読んでみました.

 

 

Method

1988年2月から2016年8月までの腎移植後を受けた症例が対象.

Inclusion criteria

 1)18歳以上
 2)CSA,TAC,non-CNI(Sirolimus)を2週間以上投与
 3)血中濃度が治療域に入っている.

Exclusion criteria

 1)移植前から振戦がある.
 2)薬剤性以外の特定の不随意運動の診断となる.
 3)他に振戦を生じる薬剤を使用した.

 

タクロリムス(TAC)群,シクロスポリン(CSA)群,非カルシニューリン阻害薬(non-CNI)群で比較.

Clinical Assessment

振戦の特徴,分布,重症度を評価.

振戦の重症度として,Fahn–Tolosa–Marin (FTM) rating scaleを測定した(FTM rating scoreは,FTM total scoreとFTM ADL scoreを測定).

パーキンソニズムの評価として,Unified Parkinsons’s Disease Rating scale (UPDRS)- part IIIを測定した.

小脳失調の評価として,Scale for the Assessment and Rating of Ataxia (SARA) を測定した.

ニューロパチーの評価としてneuropathy scoreを評価.

Results

n=126 (男:女=79:47.年齢 56.9+12.4歳)

TAC群 67例,CSA群 32例,non-CNI群 27例.

 

126例中87例で振戦あり(69.0%).

各群の振戦出現率は,TAC群 55/67例(82%),CSA 20/32例(62%),non-CNI 12/27例(44%).

TAC群が他の群と比べて有意に振戦が多い. 

FTM total score

TAC群 11.6+1.02,CSA群 8.4±1.6,non-CNI群 4.9±1.1

 (TAC群>CSA群. TAC群>non-CNI群)

FTM-objective score

total scoreと同様の有意差あり.

FTM-ADL score

TAC群 1.1±0.2,CSA群 1.1±0.2,non-CNI群 0.04±0.04

 (TAC群>non-CNI群. CSA群>non-CNI群)

 

f:id:yukimukae:20190722210946p:plain

振戦の性状

 action tremor :45例 (4例がpostual,4例がkinetic,37例がboth).

 action + resting tremor:42例 

 intention tremor:0例

 isolated resting tremor:0例

各治療薬間でtremorの種類に差無し.

tremorは常に左右対称.

振戦の分布

 両上下肢:39.1%

 上肢+頭部/顔面:24.1%

 上肢単独:18%

 下肢+頭部/顔面:9.2%

 上下肢+頭部/顔面:9.2%

  体幹や下肢,顔面に単独で生じる症例はいなかった.

 

各治療薬間でtremorの分布に差無し.

振戦と関連する因子

TAC群では,振戦ありの症例が,振戦なしの症例よりTAC血中濃度が有意に高い(z = 1.97, p < 0.05).TAC血中濃度と振戦重症度(FTM total score)との相関は無し(Spearman ρ = 0.13,p > 0.05).

TAC群では,振戦ありの症例が,振戦無しの症例よりコレステロール値が有意に低い(z = 2.6, p = 0.01).

 

全ての症例でパーキンソニズムを認めない.小脳失調とニューロパチー徴候の所見は軽度のみであった(SARAとneruropathy score)

各群間や,振戦あり/なし間で,SARA,neuropathy scoreに差無し.

FTM total score,SARA,neuropathy scoreに相関なし.

Discussion

 TACが他の薬剤より振戦出現率が高い.

 振戦の特徴として,四肢の動作時振戦が最も多いがそれ以外の様式も多い.48%で安静時振戦もみられる.

 全例で小脳失調や末梢神経障害の所見は認めなかった.

 TACについては,振戦出現した症例ではコレステロール値が有意に低い.TACは脂溶性が高く,血中ではLDLと結合している.コレステロール値が低いと遊離TAC濃度が上昇し,BBBを通過して脳に移行しやすい.

 


 


読んでみた感想

 まず,振戦出現率が比較的高いことに驚いた.同薬を使用した経験はあるが,ここまで振戦の出現率が高い印象はなかった.(今回の研究は移植後での免疫抑制であり,膠原病等で使用する時とは状況が違うのか?)

 振戦の特徴として上肢優位で左右差なく動作時振戦が多い,など,本態性振戦と類似するようですね.振戦を見たときは投薬状況や振戦出現時期の確認が重要であると再認識しました.

  


 その他,

 FTM scoreやneuropathy scoreは,今まで知りませんでした.いずれも日本語版が見つからず.

 FTM scoreについては,探せば見つかるみたいです.21項目あるようで,日常診療で使うのは難しそうですね.

 neuropathy scoreについて,詳しくは分からず.いずれまた調べたいと思います.

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