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燃え尽き脳神経内科医の備忘録・学習記録

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脳神経内科医によるブログです。自己学習として読んだ論文や、論文中で出た英単語を記録しています。

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甲状腺疾患に伴う小脳症候群:Review論文|神経内科の論文学習

Posted on 2019年10月23日 By 雪むかえ 甲状腺疾患に伴う小脳症候群:Review論文|神経内科の論文学習 へのコメントはまだありません
医学, 脳神経内科, 論文

失調症を見る際に甲状腺機能と抗甲状腺抗体をルーチンで測定するよう心がけています.実際のところ,ほとんどの症例で正常の結果でした.

これまで 甲状腺機能低下や橋本脳症に伴う失調 と診断した経験はありませんでした (疑った症例は数例いますが,最終的には納得して診断とできませんでした)

 

最近の論文で,甲状腺疾患に伴う小脳症候群 のReviewがありました.

あまり Review がない分野と思ったので 今回 読んでみました.

  • Cerebellar Syndrome Associated with Thyroid Disorders  Review
    • 検索方法
    • 結果
      • 甲状腺機能低下症に伴う失調
      • 橋本脳症に伴う失調
      • 甲状腺機能低下性失調 と 橋本脳症に伴う失調の比較
    • Discussion
      • 甲状腺疾患/橋本脳症に伴う失調と,他の失調症との比較

 

Cerebellar Syndrome Associated with Thyroid Disorders  Review

 Cerebellum. 2019 Oct;18(5):932-940.       DOI : 10.1007/s12311-019-01059-9.

検索方法

PubMedで1965~2018年の文献を検索.
小脳失調,甲状腺機能障害,橋本脳症,甲状腺機能低下,甲状腺機能亢進症,自己免疫性甲状腺炎に関連するステロイド反応性脳症,などで(case repor, series, reviewsなど)を検索.

Inclusion:小脳症候群 or 小脳失調と診断され,甲状腺機能障害や抗甲状腺抗体を認めた症例.
Exclusion:症例の情報が不十分(年齢,性別,治療反応性など).

31の文献を抽出した.
甲状腺疾患に併存する小脳症候群の症例65例 (甲状腺機能低下症:28例.橋本脳症37例).

結果


甲状腺機能低下症に伴う失調

  • 臨床症状/所見:失調歩行 100%,四肢の失調 61%,構音障害 50%,眼振 6%,回転性めまい 4%.
  • CT所見:両側小脳の萎縮 25%
  • 治療反応性:甲状腺ホルモン補充で 74%が完全寛解,26%が部分的寛解.
  • 画像上の萎縮所見の有無での治療反応性
     画像上萎縮あり:66%が完全寛解
     画像上脳萎縮なし:89%で完全寛解  (p=0.45)

橋本脳症に伴う失調

  • 甲状腺機能:甲状腺機能低下症 11%,潜在性甲状腺機能低下症 7%,甲状腺機能正常(euthyroid) 82%
  • 性別:女性 65%
  • 失調発症:49歳
  • 小脳失調発症から診断までの期間:2.3年 (SD3.8年)
  • 臨床症状:失調歩行 100%,四肢失調 74%,構音障害 65%,眼振18%,眼球運動障害13%,回転性めまい 11%.
    ジストニア,精神症状,ミオクローヌスは少数例でみられた.
  • 画像所見:小脳萎縮 68%.正常32%.
  • 自己抗体:全例で抗甲状腺抗体(抗TPO抗体/抗Tg抗体)が陽性.抗体の内訳は下記.
      7/37例:抗TPO抗体が単独陽性.
      2/37例:抗Tg抗体が単独陽性.
     16/37例:抗TPO抗体/抗Tg抗体が両方陽性.
       9/37例:NAE抗体が陽性(臨床的特徴とNAE抗体との相関はみられなかった)
     12/37例:抗体の種類が不明.
  • 免疫療法への反応性〈保険適応外〉:完全寛解 57%.部分的に失調が残存 43%.1例が自然寛解.
    完全寛解例と部分的寛解例では,失調の期間に差はなかった.
    画像で小脳萎縮を認めた例の完全寛解率:40%

甲状腺機能低下性失調 と 橋本脳症に伴う失調の比較

 橋本脳症では,失調発症が若年で,症脳萎縮の頻度が多い.

Discussion


甲状腺疾患/橋本脳症に伴う失調と,他の失調症との比較

  • 錐体外路徴候,錐体路徴候,感覚障害,嚥下障害,Fasciculationは遺伝性失調症でみられるが,甲状腺関連失調症ではみられない.
  • ジストニア,眼球運動障害,精神症状は遺伝性,特発性,後天性の失調症でみらる.程度は軽いが甲状腺関連失調でもみられうる.
  • 純粋失調の場合や,他の特徴が目立たない場合は,甲状腺関連失調を見逃す可能性が高くなる.

f:id:yukimukae:20191023210838p:plain

感想

文献中にも記載があったと思いますが,純粋失調症を呈した場合に,孤発性成人発症性失調や遺伝性脊髄小脳変性症と紛らわしいようです.

まずは甲状腺機能と抗甲状腺抗体を調べ,疑ってみることが重要であると感じました.
治療反応性があることから,稀ではありますが見逃さないよう気をつける必要がありますね.

文献中の,他の失調症との比較は参考になりました.

 


 

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