燃え尽き脳神経内科医の備忘録・学習記録

脳神経内科医によるブログです。論文を独り抄読会として載せていきます。論文を読む際に調べた英単語も記録しています。よろしければ御覧ください。

前方循環系の脳卒中で生じた四肢麻痺: 症例~診断|神経内科の論文学習

Tetraparesis following an anterior circulation stroke: A case report (Case Reports in Neurology)

 Case Rep Neurol 2018;10:342–345
 DOI:10.1159/000495457

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

前方循環系の脳卒中で四肢麻痺をきたした症例

 四肢麻痺を生じた脳卒中.非常にrare caseですが,このような症例もあるのですね.

 

 

症例 62歳男性

【現病歴】

 前日に複数回転倒あり.
 翌日,頭痛を訴え転倒し,その後,すぐに傾眠となった.
 受診後の診察で右共同偏視と傾眠を認めた.脳波検査から当初は複雑部分発作と診断し,レベチラセタム750mgとミダゾラムを投与し,その後,ラコサミドとクロナゼパムも追加したが,てんかん波は続いた.

 下肢優位の四肢麻痺がみられ,遷延した.

 【その後の経過】

 頭部MRIでは,両側性前大脳動脈領域に亜急性期の虚血性変化を認めた.
 血管造影では,前大脳動脈(ACA)が対になっておらず,azygos anterior cerebral artery(AACA)を認めた.また,部分的に血栓形成を認め,A-to-A塞栓を考えた.
 DSAでは,AACAの分岐部に2つの小動脈瘤を認めた.

 アスピリンとアトルバスタチンが開始された.精神運動遅滞,構音障害,四肢麻痺が続いた.リハビリ転院後に上肢麻痺と構音障害は改善した.軽度の認知機能緩慢が残ったが,認知機能も大幅に改善した.

 小動脈瘤に関しては経過観察の方針となった.

  (その後のてんかんの経過に関しては記載がなかった…)

 

Azygos anterior cerebral artery

 いい日本語名を見つけることができませんでした.(過去にはは奇性前大脳動として症例報告もあるようです.正式な日本語名称なのでしょうか?).

 本症の詳細については他文献から調べました.

  • A2 segmentの異常で胎生期の血管の遺残が原因とされる.
  • 通常は臨床的な問題はないが,脳梁形成不全や動静脈奇形,虚血などと関連する.動脈瘤が合併しやすいとする報告もあるが,相反する報告もある.
  • azygos ACAの頻度は0.1~11.6%とされる.

   f:id:yukimukae:20190728230057p:plain文献より引用

  • Azygos Anterior Cerebral Arteryはさらに5つのサブグループに分けられる.
    TypeⅠ:classical/true
    TypeⅡ:shorter stem(多くは脳梁膝付近で左右の脳梁周囲動脈に分岐する)
    TypeⅢ:A2 segmentが2つあるが,一方はすぐに途絶する.
    TypeⅣ:A2 segmentが2つあるが,一方は脳梁縁動脈で途絶する.
    TypeⅤ:中前大脳動脈

  f:id:yukimukae:20190728230259p:plain

 

  • 病理解剖を行い,血管構造を確認した研究では,Azygos Anterior Cerebral Arteryが11.6%でみられ,サブグループTypeⅠ~Ⅴはそれぞれ2.7%,1.8%,3.6%,2.7%,0.9%であった.

 


 

 本例では本来左右に分かれる前大脳動脈が1本であり,その血管からA-to-A塞栓で左右の梗塞を生じたのでしょうか.血管のvaliationはややこしく,無症候性かつ目立たないくらいのものは気づかないこともあるかもしれない.普段から注意して見るようにしたいと思いました.

 今回はAzygos Anterior Cerebral Arteryを取り上げましたが,前大脳動脈のvaliationは様々あり,また機会があれば触れたいと思います.

 

参考文献

  1. Variations of anterior cerebral artery in human cadavers. Neurology Asia 2013; 18(3) : 249–259  (←PubMedで検索しても出てこない?)
  2. Review of the Anatomy of the Distal Anterior Cerebral Artery and Its Anomalies. Turk Neurosurg. 2016;26(5):653-61. (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27337235)