燃え尽き脳神経内科医の備忘録・学習記録

脳神経内科医によるブログです。論文を独り抄読会として載せていきます。論文を読む際に調べた英単語も記録しています。よろしければ御覧ください。

MayThurner症候群が原因となった脳塞栓症の症例|神経内科の論文学習

久しぶりに文献読みました.

May-Thurner syndrome,初めて知りました.
恥ずかしながらRoPE scoreも初耳でした.

いずれ文献読んでみようと思います.

 


Pearls & Oy-sters: May-Thurner syndrome as a cause of embolic stroke of undetermined source in a young patient

 Neurology. 2019 May 21;92(21):e2507-e2509.
 https://dx.doi.org/10.1212/wnl.0000000000007541

 

Pearls & Oy-sters

May-Thurner syndrome (MTS)では解剖学的異常により,左総腸骨静脈(CIV)が右総腸骨動脈(CIA)で慢性的に圧排され,深部静脈形成を生じる.

抗リン脂質抗体症候群やホモシステイン血症は動静脈での血栓形成を生じる.

第Ⅴ因子Leiden変異,ATⅢや,プロトロンビン,プロテインCの変異は静脈血栓と関与する

 

塞栓源不明の脳塞栓において,卵円孔開存(PFO)が存在し,エコーで下肢深部静脈が陰性である場合は,より近位での血栓形成を生じうるMTSの有無を評価する必要がある

PFOでは心房中隔瘤の存在やシャント量などが血栓塞栓の可能性を高める.

PFOが脳梗塞の原因となったか推定するのには,臨床的なスコアリングであるRisk of Paradoxical Embolism(RoPE)が有用である.

 

Case report

35歳女性

既往歴/生活歴:偏頭痛.不妊症無し,経口避妊薬内服なし.非喫煙者.

家族歴:脳卒中や血栓傾向の家族歴無し.

現病歴:突然の左麻痺,感覚障害,左視野障害で発症.t-PA施行し転院搬送.

所見:BMI 24,神経診察では左運動失調.MRIで右レンズ核,被殻,放線冠に急性期梗塞あり.CTアンギオ,心電図,ホルター心電図,尿検査は異常なし.血液検査では軽度の脂質異常のみ.血栓傾向の検査では,ATⅢ 79%(80-117%)と軽度低下.経胸壁心エコーでのbubble studyで右左シャントの所見あり.経食道心エコーではASAに伴うPFOの所見を認めた.下肢静脈エコーではDVT認めず.骨盤部MRVでは,左総腸骨静脈が右総腸骨動脈で圧迫される所見を認めたが,血栓は認めなかった.この所見はMTSを示唆する.

この症例では,長時間の運転で腸骨静脈の血栓が奇異性塞栓を生じ,奇異性塞栓を生じたものと考えられた.抗凝固薬を開始された.

 

Discussion

ESUSは虚血性脳卒中の25-33%を占める.

MTSでは左総腸骨静脈が右総腸骨動脈と腰椎で圧迫される.1957年にMayとThurnerが,剖検の22%でこのvariantを認めることを発見した.このanomalyにより静脈血栓を生じやすくし,PFOを合併すると脳塞栓を生じうる.

 

PFOは健常人の25-27%でみられ,ESUS患者でより多い.ESUSではPFOのodds 3倍との報告ある.PFOが脳卒中と関連したか,偶然発見したものかは区別するのが難しい.その区別のためRoPE scoreが考案された.若年で血管リスクが無い症例ではスコアが高くなる.

次に血栓ができる部位を特定する.下肢エコーでDVTを検索する.血栓傾向の検索として,ATⅢ,第Ⅴ因子,プロテインC,第Ⅷ因子.骨盤部のMRVを行うことでより近位での血栓形成の検索を行う.

 

2つのESUSとPFO合併例の後方視的研究ではMTSの有病率は6~8%で,若い女性に多かった.他の研究ではESUS患者でMTSが多いことや,圧迫が高度であることが報告されている.ESUS患者ではMTSも考慮すべきである.

 

 

[RoPE scoreの文献]

Neurology. 2013 Aug 13; 81(7): 619–625.

https://dx.doi.org/10.1212/wnl.0b013e3182a08d59