燃え尽き脳神経内科医の備忘録・学習記録

脳神経内科医によるブログです。論文を独り抄読会として載せていきます。論文を読む際に調べた英単語も記録しています。よろしければ御覧ください。

成人の進行性運動失調における診断と治療:検査|神経内科の論文学習

Diagnosis and management of progressive ataxia in adults

Pract Neurol 2019;19:196–207.
doi:10.1136/practneurol-2018-002096

pn.bmj.com

 

成人の進行性運動失調における診断と治療 第2回

 前回の続きです.

 前回は 失調の種類,臨床的特徴,MRI所見 に関して載せています

 今回は検査に関してです.

 ※一部,本邦で保険適応の無い項目もあります.

 

www.neurology-memo.work

 

診断のための検査

 

第1選択

  • BUN,電解質,Cr,血算,赤沈/CRP,肝酵素,甲状腺機能,ビタミンB12葉酸(加えてホモシステイン),血糖,レントゲン

    (多くの症例では,第二選択の検査も必要になる)

 

第2選択

  • αFP,血液塗抹標本セルロプラスミン/銅,セリアック病スクリーニング,CK,遺伝子検査(FA,SCA1,2,3,6,7(12,17) FXTAS)乳酸,Lipid-adjusted ビタミンE,髄液検査(細胞数,蛋白,糖,細胞診,オリゴクローナルバンド,尿酸,フェリチン),MRI(脳,頚椎),抗Hu/Yo抗体,他の傍腫瘍性抗体,抗GAD抗体,抗VGCC抗体,CT(胸腹骨盤部),髄液中14-3-3蛋白
  • 仮に家族歴がなくても遺伝子検査を検討する
  • 急速進行性(月単位)では,抗体含め腫瘍の検査を行うべきである

第3選択

  • コレスタノール,血漿オキシステロール,胆汁酸,コエンザイムQ10,脳波検査,極長鎖脂肪酸,筋生検,眼科診察/OCT,末梢神経伝導検査,フィタン酸,他の遺伝子検査(next-generation sequencing), PET-CT,White cell enzymes

  • CTで異常を認めない場合はFDG-PETを考慮すべきである.腫瘍が潜在して,早期には見つからない場合もある.
  • CJDのいくつかでは(GSSなどの遺伝性CJD)は進行性失調を呈する.
  • アルコール中毒は進行性小脳失調を呈すると推測されるが,そのような症例では,通常他疾患検索のため検査を要する.

遺伝子検査

 遺伝性失調症の遺伝子診断は未だ発展途上である.

 next-generation sequencingの登場など,急速に発展している.next-generation sequencingでは失調症に関連する遺伝子を検索することができる.診断がつかない場合はエクソン解析や全ゲノム解析も検討する.

 遺伝子検査陽性時に家族へ与える影響について考慮する必要がある.遺伝子カウンセリングを検討する.

優性遺伝形式

 40以上のSCAsが確認されているが,限られた地域や家系で少数例のみみられる病型もある.

  • SCA1,2,3認知機能障害や,緩徐なsaccade,眼筋麻痺,錐体路/錐体外路障害,末梢神経障害などを合併し,複雑な症候を呈する.
  • SCA7黄斑変性と視力障害を呈する.
  • SCA6/episodic ataxia type2:イギリスで最も多い優性遺伝失調である.

  • SCA7やDRPLAは遺伝時にリピート延長をきたしやすい(特に父からからの遺伝の場合).SCA6(比較的純粋型のSCA)はCAGリピートが安定している
  • SCA6の原因遺伝子は,他の病型である優性遺伝失調である,反復発作性運動失調症type2と,家族性片麻痺性片頭痛を呈する(両疾患とも,SCA6と同じように,50歳代から進行性の失調を呈する).

  • SCAsの遺伝子変異は様々であり,トリプレットリピートの疾患もあれば(SCAs1-3,6),非トリプレットリピートの疾患もある(例:SCA10,intronic pentanucleotide repeat expansion of ATXN10),欠損/挿入,ミスセンス/ナンセンス変異などもある.

劣性遺伝性の失調

  • Friedreich失調症(FA):白人で最も多い遺伝性失調症で,20,000~5,000人に1人の有病率である.
  • 痙性対麻痺7(SPG7):古典的には遺伝性痙性対麻痺を呈するが,イギリスではFAに次いで多い劣性遺伝性失調症である.軽度の痙性のみを呈することもある.
  • Charlevoix-Saguenay痙性性失調が特徴である.OCTが診断に有用である.
  • 毛細血管拡張性運動失調症血清αFPとCKが高値であり,アルブミンは低い

  • 頻度としては,FAとSPG7が多く次いでAOA type2と毛細血管拡張性運動失調症が多い(成人例は多くない).MRIは診断に有用である.

 遺伝性失調症の診断に関するnext-generation sequencingは発展しているが,臨床病型(検査値含めて)を正確に評価することが重要である.

 ニューロパチーの有無,種類をもとに,4つのカテゴリーに分けられる(FAは除外して).

  1. ニューロパチーなし:SYNE1やANO10, ADCK3変異
  2. 純粋感覚性末梢神経障害:POLG1, AVED, RFC1変異
  3. 軸索障害型の運動感覚性ニューロパチー:AOA type1,2, 脳腱黄色腫症
  4. 脱髄型ニューロパチー:Charlevoix-Saguenay

血清学的検査

 進行性小脳失調症での免疫機序の関与は徐々に認知されてきている.

グルテン失調症

  • Sheffieldの研究では,25%がグルテン失調症であった.
  • IgG型/IgA型抗グリアジン抗体と,endomysium抗体taminase抗体(TG6抗体を含む),十二指腸生検を行う.
  • 抗TG6抗体はグルテン失調で有用なバイオマーカーである.(TGM6遺伝子異常は優性遺伝SCA(SCA35)と関連し,TG6が小脳機能と関連することを示唆する)
  • グルテン失調症のうち,小腸異常を伴う(Coeliac病)のは半数のみである.残りの半数は抗グリアジン抗体が診断に必須である.
  • Coeliac病の中には,進行性のミオクローヌス失調(Ramsay Hunt)という特徴的な病型を呈することがあり,殆どは難治性のセリアック病で,積極的な免疫療法や化学療法が必要である〈本邦では保険適応外〉

他の免疫介在性失調症

  • 傍腫瘍性脊髄小脳変性症,抗GAD抗体関連失調症,抗VGCC抗体,抗DPPX抗体などがある.
  • 急性~亜急性に症状を呈する.

診断フローチャート

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