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燃え尽き脳神経内科医の備忘録・学習記録

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成人の進行性運動失調における診断と治療:治療介入|神経内科の論文学習

Posted on 2019年10月4日 By 雪むかえ 成人の進行性運動失調における診断と治療:治療介入|神経内科の論文学習 へのコメントはまだありません
医学, 学習, 脳神経内科, 論文

神経内科の論文学習Diagnosis and management of progressive ataxia in adults

Pract Neurol 2019;19:196–207.
doi:10.1136/practneurol-2018-002096

pn.bmj.com

 

成人の進行性失調症における診断と治療 第3回

 3回目,今回で最終です.
 簡単な内容の部分は省略しています.

 

 ※一部,本邦で保険適応の無い検査項目・治療内容もあります.

 

 

1回目

www.neurology-memo.work

 

2回目

www.neurology-memo.work

 

 


治療介入


治療可能な失調症

 グルテン失調や免疫介在性失調を除けば,治療可能な失調はまれである.

  • グルテン失調:抗グリアジン抗体陽性の失調症例では,腸管病変がなくてもグルテンフリー食を行うことを勧める.抗体価は6ヶ月ごとの再検して,消失しているか確認する.
  • ビタミンE欠乏性失調症:Friedreich失調症と紛らわしい(臨床的にもMRIでも).血清ビタミンE濃度低下はlipid-sdjusted ビタミンEで検査すべきである(遊離ビタミンE濃度は信憑性が乏しく,誤診につながるため).無βリポ蛋白血症を含むビタミンE吸収障害は,類似した表現系を呈する.本症の症例は1500mg/日ほどの補充を要する.

     

  • CoQ10欠乏性失調症:認知度が低い.劣性遺伝で,ADCK3の遺伝子変異による.骨格筋でのCoQ10の低下を認める.重症度は様々で,痙攣や精神発達遅滞を呈することもある.CoQ10投与で失調が改善することがあるが,全例ではない(適した投与経路や投与量は未だ不明である).APTX変異の症例(AOA1)とANO10変異の症例も二次性のCoQ10欠乏症を生じ,投与が有用な可能性がある.
  • 脳腱黄色腫症:幼児期に慢性の下痢を生じ,10歳までに白内障を生じる.腱にコレステノールの沈着を生じる.診断が確定したら,ケノデオキシコール酸が安定化や一部手は症状改善させる(超早期の場合).
  • Niemann-Puck typeC:脳や臓器へのコレステロールとグルコスフィンゴ脂質の蓄積で種々の障害を生じる.結果的に,脾腫や肝腫大や失調などを呈する.核上性垂直性注視障害,ジストニア,ミオクローヌス,痙攣,認知機能障害などを生じる.診断は難しく,特に遅発性型の場合は難しい.骨髄生検や皮膚生検は必ずしも診断に寄与しない.遺伝子検査の方がより診断に結びつく(2つの遺伝子が関与している.NPC1が95%,NPC2が5%).血漿オキシステロールと胆汁酸の測定は安価で有用なスクリーニングツールである.認可されているNPCの疾患修飾薬としてミグルスタットがある.

 他に治療可能な失調症はあるが,通常は小児期発症である.CoQ10欠損症,低βリポ蛋白血漿,Hartnaup病,ビオチニダーゼ欠損症,ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症などである.Glut1欠損症は発作性運動障害,痙性,失調を呈し,発症はしばしば遅い.ケトジェニック食は合併する痙攣に対して有用であるが,歩行障害には効果が乏しい.

対症療法

各症状の専門家や多職種連携での対処を検討する.(しかし,十分なエビデンスはない)

  • 痙性や膀胱直腸障害:他の神経疾患(多発性硬化症など)と同様の対処.
  • 言語,嚥下:会話や言語に関する治療は失調患者の生涯を通じて重要である.早期から嚥下機能のモニタリングを行う.胃瘻の計画をする.
  • 精神面:小脳疾患と認知機能との関連性は十分に認識されていない.パーソナリティや行動障害,判断力,精神状態(不安,抑うつ)など生じうる.これらの症状で倦怠感や睡眠障害を合併するが,十分に認知されない.
  • 心機能:Friedreich失調症では心電図や心臓超音波検査で心筋症合併を評価する.心筋症への投薬や不整脈への治療のため,循環器科の介入を依頼する.
  • 反復発作性運動失調症 type2(EA2):周期的な小脳失調を生じて,数時間~数日続く.しばしば偏頭痛も伴い,まれに痙攣を生じる,晩期には,進行性失調となり,MRIで小脳萎縮を生じる.発作はストレス,肉体的疲労,カフェイン,アルコールで生じるため,適切に説明する必要がある.
    アセタゾラミドが主治療であるが,腎結石や知覚異常などのリスクがある.十分な利尿とともに,年1回の尿路系の超音波検査を勧める.フルナリジンと4-アミノピリジン(Kチャネルブロッカー)も効果があるが,イギリスでは承認されていない(痙攣がある場合は4-アミノピリジンは禁忌).ジクロフェナミドは非常に効果的で任用性も良いが,非常に高価である.

 

(モニタリング,支援団体,緩和治療は簡易的な内容であったため割愛しました)

 


読んで感じたこと

 日頃鑑別に挙げない失調症がいくつも記載されていました.稀な疾患も多数ありますが,診断を絞るために,可能な範囲で努力しなければいけないと感じました.(もちろん,検査すべてが保険収載されているわけではなく,遺伝子検査は困難なものも多いのですが)

 知らないと鑑別すら挙げられない疾患も多いです.Niemann-Puck typeC,脳腱黄色腫症等,治療可能な疾患もあるため,そのような疾患は適切に疑えるようになれればと思います.

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