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燃え尽き脳神経内科医の備忘録・学習記録

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アルコール性ニューロパチーのレビュー/メタ解析: 疫学~リスク|神経内科の論文学習

Posted on 2019年7月27日 By 雪むかえ アルコール性ニューロパチーのレビュー/メタ解析: 疫学~リスク|神経内科の論文学習 へのコメントはまだありません
医学, 学習, 脳神経内科, 論文

Alcohol-related peripheral neuropathy: a systematic review and meta- analysis (Journal of Neurology)

J Neurol. 2018 Nov 22.
DOI:https://doi.org/10.1007/s00415-018-9123-1

doi.org

アルコール性ニューロパチー:系統的レビューとメタアナリシス

 87の既報告を元にした,アルコール性ニューロパチーに関した系統的レビューとメタアナリシス.

 少し長くなるので,2回に分けます.

 

 かなりざっくりとまとめたので,ぜひ原著へ.

 


慢性アルコール多飲者でのニューロパチー有病率

  • 病歴と診察でニューロパチーを診断した報告の統合解析:ニューロパチー有病率は44.2%(CI 35.9–53%, n = 2590).

f:id:yukimukae:20190726140256p:plain

 

  • 神経伝導検査(NCS)を用いてニューロパチーと診断した報告の統合解析:ニューロパチー有病率は46.3% (CI 35.7–57.3%; n = 1596).

f:id:yukimukae:20190726140327p:plain

 

ニューロパチー患者でのアルコール性ニューロパチーの有病率

  • 全身性ニューロパチー520例を検討した研究では,そのうち8.7%でアルコール性ニューロパチーであった.
  • 高齢になるにつれてアルコール性ニューロパチーの割合が減少 (高齢者でのニューロパチーを検討した研究では,アルコール性ニューロパチーの割合は65~75歳では6.1%,75~84歳では 1.4%,85歳以上は0%).

 

リスクファクター


アルコール摂取

  • 当然だが,複数の報告で,アルコール摂取とニューロパチー発症に相関性があることが示されている.

 

  • アルコールの摂取様式ごとのニューロパチー出現率は下記のように報告されている.
    ・episodic drinkers(非頻回で非定期の飲酒.週5日以上は酔わない日だが,たまに酔っ払う):11.3%
    ・frequent heavy drinkers(週3日以上の飲酒.週1日以上は酩酊):29.9%
    ・continuous drinkers(ほぼ連日飲酒するが,酔っ払うことはない):29.6%
  • 多量飲酒の期間とニューロパチー発現には相関がある.
  • 総アルコール摂取量(total lifetime dose of ethanol:TLDE)がsural SEPの振幅と逆相関する.TLDEはニューロパチー頻度増加と関連することも複数の研究で報告されている.

性別

  • 男性でニューロパチー有病率が多いという報告がある.
  • 小規模の研究だが,女性は重度のニューロパチーになりやすく,男性は軽度のニューロパチーになりやすいと報告されている(飲酒量での調整を行っていないため,男性の方が飲酒量が多いことが原因かもしれない).

遺伝素因

  • HLA typeとアルコール性ニューロパチーとの関連性はない.
  • 日本の研究では,アルコール多飲者のうち,ALDH2*2 mutant alleleの人はSural nerve SNAPsが低いことが報告されいている.

  • アルコール多飲の家族歴はリスクになる.(遺伝素因か,環境因子かは不明).

アルコールの種類

  • ビールや蒸留酒より,ワインを飲む人でNCSの結果が悪かった.ワイン摂取者は他の飲酒者より多くのエタノールを摂取することや,ワインが他の飲料より不純物が多いことが関連しているかもしれない.

栄養障害の影響

  • 栄養障害がアルコール性ニューロパチーの病態に関与していることは,複数報告されている.
  • 低栄養がアルコール性ニューロパチーのリスクを上昇させる,あるいはアルコール代謝でビタミンB1が欠乏してビタミンB1欠乏性ニューロパチーを生じる,などの機序が考えられる.
  • 栄養状態と関連なくアルコール性ニューロパチーが発症し,ニューロパチーの重症度も栄養状態とは相関しないことも報告されている.
  • アルコール性とビタミンB1欠乏性は異なる臨床像や病理像を呈するとの報告がある.アルコール性ニューロパチーは緩徐進行性で感覚優位の症状を呈する.B1欠乏では急性の経過(56%で1月以内)で発症し運動優位の症状を呈し,歩行障害を生じるが,バリエーションは様々で感覚優位の症例もある.腓復神経生検では,アルコール性では小径繊維の障害が主体であるが,ビタミンB1欠乏では大径繊維障害と神経周囲の浮腫が主体とされる.

肝障害の影響

  • 慢性肝障害とニューロパチーの関連性は幾つか報告されている.肝障害,特に肝硬変はアルコール性ニューロパチーの病態に非常に関与すると推測されている.
  • ニューロパチーと肝機能が有意に相関したことや,アルコール多飲者で肝疾患とニューロパチー重症度が相関したなどの報告がある.その一方で,肝障害とニューロパチーの関連性を否定する報告もある.
  • アルコール性の有無でのニューロパチー合併率を評価した2つの小規模研究がある.1つでは,アルコール性肝障害での45%,非アルコール性肝障害の22%でニューロパチーを合併した.もう1つでは,アルコール性肝硬変の88%,非アルコール性肝硬変56%でニューロパチーを合併した.いずれの研究もアルコール性と非アルコール性に有意差はなかったものの,アルコールの有無がニューロパチーに関与すると考えられた(小規模研究だったため,有意差が出なかったと考えられる).これらの報告では,肝障害自体がニューロパチーに関与すると考えられた.
  • 神経病理の検討では,アルコール性の有無で病理所見に差はなかったと報告されている.
  • 現時点でのデータでは肝障害との関与は結論が出せない.肝障害とアルコール摂取がそれぞれ独立してニューロパチーと関与する可能性があるが,両病態をオーバーラップすることもしばしばある.肝障害合併がニューロパチーのリスク因子となるかもしれない. 

 

 


 感想

 アルコール多飲者の40%ほどでニューロパチー合併している,とは比較的頻度が高いみたいですね.

 アルコール毒性による要素だけでなく,栄養や肝障害など,他の要素も絡んだ病態と考えるのが良いのでしょうか.

 

 ビール等よりワインの方がリスク高いというのは興味深かったです.下記がその論文のようです.

academic.oup.com

 

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