燃え尽き脳神経内科医の備忘録・学習記録

脳神経内科医によるブログです。論文を独り抄読会として載せていきます。論文を読む際に調べた英単語も記録しています。よろしければ御覧ください。

アルコール離脱の症状と評価について|神経内科の論文学習

Alcohol withdrawal syndrome: mechanisms, manifestations, and management.

 Acta Neurol Scand. 2017 Jan;135(1):4-16.
 DOI: 10.1111/ane.12671. 

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

 アルコール離脱…国試の勉強でも直前に暗記して乗り切った記憶があります.早期離脱,後期離脱などいまいち理解していない部分でした.

 実臨床で,"どのように診断する?","重症度評価は?"など,疑問点もあり,とりあえず読んでみました.

 かなりざっくりした内容です.スコアなどは参考になりました(各スコアはGoogleで検索すると比較的すぐ見つかります)

※病態,診断マーカー,治療については割愛しています.

 

臨床病型

通常,最終飲酒から1~3日で症状が出現する.時にアルコール血中濃度が0にならなくても症状を呈する.

 

DSM-5では,下記の2項目でアルコール離脱症候を診断する.

 1. 長期の大量飲酒を中断した.
 2. 離脱症状が他の疾患で説明できない.

 

アルコール離脱症候でよく見られる症候.

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断酒から離脱症状発現までの時間での分類

 アルコール離脱症候群は,ダイナミックで複雑である.そのため,予後予測のために症状の重症度や,発症までの時間などを用いた分類が用いられている.

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早期離脱

 断酒後6時間で始まり,4~48時間続く
 自律神経症状や振戦,過活動,過敏,不眠症,頭痛などを呈する.

 軽度の離脱では,見当識が保たれている.
 中等度では意識下での幻視や幻覚,幻聴,錯覚などが生じて,6時間ほど続く.

後期離脱,振戦せん妄

 断酒後48~72時間で生じ,2週間ほど続く

 混乱状態,知覚異常,自律神経症状,精神的興奮など.

 覚醒度低下や精神運動低下などの低活動型を呈することもある.その場合,予後不良で,診断や治療が遅れやすく,その後の合併症も生じやすい.低活動型の場合,併存庄を除外する必要がある.

アルコール離脱痙攣

 痙攣閾値低下により生じる.90%以上では長期飲酒後の断酒48時間以内に生じる

 他の離脱症状を伴わず単独の痙攣生じることもよくみられる.
 半数で繰り返し痙攣が生じ,5%で痙攣重積となる.

 離脱時に急性症候性痙攣を生じた場合,死亡率が4倍になる.離脱痙攣では重度の離脱症状へのリスク因子となり,30%で振戦せん妄を生じる

急性症候性痙攣

 断酒後6~48時間で生じる.

非誘発性痙攣

 断酒後48時間以降の痙攣で,外傷や薬剤離脱などの他の原因による痙攣が示唆される.

 

 

アルコール関連障害を検出する質問表

・AUDIT(Alcohol Use Disorder Identification Test)

 10個の質問項目から構成される.

 アルコール離脱症候群の予測ツールとして研究された.
 陽性適中率が良くないため,離脱リスクを過大評価し,不要な予防治療につながる可能性がある. 

・FAST(The Fast Alcohol Screening Test)

 AUDITから抽出された4個の項目から構成される.忙しい臨床現場で使用できるように,2段階の質問票となっている.

 1段目の質問で>50%のアルコール関連障害が検出できる.
 FAST score≧3で陽性となる.

・CAGE screening test

 Cut down(節酒しようとしたことあるか?),Annoyed by criticism(飲酒を指摘されてイライラしたことはあるか?),Guilty about drinking(飲酒に罪悪感はあるか?),need for an “Eye-opener” in the morning(迎え酒をしたくなることはあるか?).
 頭文字から"CAGE".
 質問は最近の状況ではなく,これまでの飲酒歴も含む.

 合計スコア≧2点で,アルコール関連障害の感度77%,特異度91%.

・TWEAK

 CAGEを改訂した質問検査.

 Tolerance, Worried, Eye-opener, Amnesia, K (cutdown)から構成される.頭文字から"TWEAK".

 はじめの質問で≧6,あるいは合計スコア≧3でAUDが示唆される.
 妊婦でのスクリーニングではCAGEより優れる.

アルコール離脱症候群を予測する質問表

・PAWSS (Prediction of Alcohol Withdrawal Severity Scale)

 アルコール離脱(痙攣と振戦せん妄)のリスクを予測し,予防治療を開始する指標となる.閾値を4点とすると,感度,特異度,PPV,NPVは100%である.

 

アルコール離脱の重症度評価

・CIWA- Ar(Clinical Institute Withdrawal Assessment for Alcohol scale in its revised version):

最も広く使われる.
10項目で構成され,ベッドサイドで評価できる.5分ほどで評価できる

経時的に再評価することが必要で,スコアによって薬物療法を調整する.

・スコア<10:軽度の離脱.治療を要さない.
・スコア10-18:中等度~高度の離脱.
・スコア>18:治療を要する.治療しないと合併症リスクが有る.

 

 離脱の重症度評価はできるが,離脱の予測には使えない.そのため,離脱予防の指標としては使用できない.

・Alcohol Withdrawal Scale

 6つの所見(脈拍,拡張期血圧,体温,呼吸数,発汗,振戦)と,5つの精神症状(興奮,不安,感覚障害,見当識障害,幻覚)から構成される.

 5つのカテゴリーに分類される(no relevant symptoms, mild vegetative symptoms only, additional anxiety, additional disorienta- tion, and hallucinations).初日のカテゴリーは経過予測に役立つ.

脳波検査

 アルコール離脱では,てんかんの併存,脳の構造異常,痙攣誘発性の薬剤使用などの併存リスクがある.

 アルコール関連痙攣(AUDIT>8)で最も頻繁に見られる脳波所見は,低振幅脳波や,θ~δ波の減少,β波の増加,などである.(β波はベンゾジアゼピン系薬剤の投与による)

 アルコール離脱時に,光発作性反応と光ミオクロニー反応がみられるされたが,アルコール関連痙攣ではみられない.